04.05
食器洗浄機OKのうつわ
とっても便利なキッチン家電の一つに食器洗浄機があります。手間を省いて時間節約できるし、手荒れなど防げたり、除菌できたり、水の使用量を節約できたりと、ますます便利なアイテムになっています。そんな食器洗浄機ですが日本での普及率はまだ30%程度(パナソニック調べ)なんだそうです。ちなみに欧米では70%前後普及しているそうです。今後は男女の雇用機会均等など働き方が変わったり、余暇を充実させる生活スタイルへの変化で益々普及が進むんじゃないかと思います。そこで、今回は食器洗浄機OKのうつわについて少しご紹介したいと思います。
目次
食器洗浄機OKの表示について
お店で食器を買うときラベルや裏面に食器洗浄機OKと表示を目にすると思います。この表示ですがほとんどの場合、明確な基準に基づいて表示されているわけではない事をご存じでしょうか。大手家具量販店にも問い合わせてみましたが表示は「食洗器を使用して洗う事が可能という単純な意味」との回答で、危険性についても言及は何も有りませんでした。OKと表示されている物の多くは製造メーカーや納入商社の過去の経験に則って決められています。また、絵付けの劣化しにくさについてのOKなのか、洗浄に耐えられる強度についてのOKなのかも規定されていないのです(2021年3月現在)。大手の洋食器メーカーさんは自社で洗浄テストを行い上絵付の劣化の度合いを確認して洗浄機に対応できるかどうか決めているそうです。その他に検査によって一定の基準で決めているという話は、ほぼ聞いたことがありません。美濃焼の産地で統一した基準を設定してはどうかと提案したこともありましたが、各地区、各業者の思惑がまとまる事はなく、なかなか進まない現状です。特に和食器は形状やデザイン、技法も様々で一律に基準を決める事は難しいのが事実です。大事なうつわを壊してしまわない為に、以下にご紹介する点に気を付けて便利な食器洗浄機を使って下さい。
1.洗浄機内で食器が動かないようにする
食器洗浄機は内部で温水を噴射しながら汚れを流すものがほとんどだと思います。その水流に押されて食器が浮いたり、動いたりする事が有ります。その際、食器同士がぶつかって欠けたり割れたりする事があります。特に和食器は四角い物や変形の物が多く丸型の物と比べて欠けやすい形状になっています。強度の強い磁器であってもうつわ同士がぶつかると欠ける可能性があります。固定するネットなどを使ってうつわが動かないようにセットしてから洗浄してください。
2.陶器(土物)の洗浄は避ける
陶器(土物)は焼成温度が低く、原料も脆い為、強度が低い物がほとんどです。特に手造りのうつわは成型し易い水分量の多い粘土を使用するので特に焼締りが弱く強度を出す事が難しいです。この様なうつわを食器洗浄機で使用すると水流の衝撃だけで破損してしまうことが有ります。よく市場に出回っている陶器製のうつわはすぐ破損してしまうほど弱くはありませんが、食器洗浄機の利用はお勧めしていません。
3.上絵のうつわの洗浄を避ける
上絵付は鉱物などの発色する粉末をやきものの表面に乗せて焼成する事で焼き付けています。厳密に言うとやきもののボディーと絵具は結合しているわけではありません。800℃以上で焼き付けていますので簡単に剥がれるものではありませんが、洗剤と水流の衝撃で剥がれる場合が有ります。また、上絵の表面も劣化して艶がなくなったり、擦れたようになったりしやすくなる場合が有ります。
4.金属風のうつわは洗浄しない
最近は釉薬(うわぐすり)が進化してとても多くの風合いのやきものを造る事ができる様になりました。それにつれて、うつわが変色してしまったというお声を聞く機会も増えたように思います。これは釉薬の原料に金属が入っている事が原因となっています。基本的に釉薬はガラス質のベースに発色の為の金属や鉱物等をまぜて作られます。この金属が洗浄する際に使われる洗剤の酸やアルカリの成分と反応して変色する事があるようです。頻繁に起きる現象ではありませんが、ギラギラとした金属風のものや錆びたような風合いのものは洗浄機を使わない様お気を付けください。
5.乾燥
食器洗浄機でうつわを洗浄したら直ちに乾燥させてください。やきものは程度の差は有りますが吸水性があります。洗浄した時に炭水化物や油脂等のたんぱく質を含む水分が吸収されて放置されると菌が繁殖する場合が有ります。洗浄したまま洗浄器内に放置するとこの現象が起きやすいですので、乾燥機にかけるか、布巾で表面の水分を取り風通しの良い場所で乾燥させてください。
便利な食器洗浄機を活用して頂くために
面倒な注意点ばかりご紹介しましたが、知識として知っておいて頂くだけで大事なうつわを壊したり、使えなくしてしまう事を避けられると思います。アメリカでは丸くて、厚くて、重い器がいい器だとレストランの方が言うのを聞いたことが有ります。強力な洗浄機で洗浄してどんどん回転させても割れないからという、とても合理的な理由でした。でも私たちはいろんな形や色柄のうつわで食事を楽しんで頂きたいので、上手に注意しながら便利な食器洗浄機を活用して頂きたいと思います。